ニニギノミコトの本名は何か?

2024-11-30

Ninigi otokawa.png
音川安親 – 国会図書館, パブリック・ドメイン, リンクによる

ニニギノミコトの本名

ニニギノミコト(瓊瓊杵尊)の本名は、アマツヒコヒコホノニニギノミコト(天津彦彦火瓊瓊杵尊)です。

今回は、このニニギノミコトについて、語りたいと思います。

ぜひ最後まで、読んでください。

【ニニギノミコト 本名】ニニギノミコトの呼び名いろいろ

ニニギノミコトの本名はアマツヒコヒコホノニニギノミコト(天津彦彦火瓊瓊杵尊)ですが他にも色々あります。

  • アマツヒコホノニニギノミコト(天津彦火瓊瓊杵尊):『日本書紀』第九段第二の一書
  • アマツヒコクニテルヒコホノニニギノミコト(天津彦国光彦火瓊瓊杵尊): 『日本書紀』第九段第四の一書
  • アマツヒコネホノ二ニギネノミコト(天津彦根火瓊瓊杵根尊):『日本書紀』第九段第六の一書
  • ホノ二二ギノミコト(火瓊瓊杵尊):『日本書紀』第九段第六の一書、第七の一書
  • アメクニニギシヒコホノニニギノミコト(天国饒石彦火瓊瓊杵尊):『日本書紀』第九段第六の一書
  • アメノギホホギセノミコト(天之杵火火置瀬尊):『日本書紀』第九段第七の一書
  • アメノキセキノミコト(天杵瀬命):『日本書紀』第九段第七の一書
  • アメ二ギシクニギシアマツヒコホノニニギノミコト(天饒石国饒石天津彦火瓊瓊杵尊):『日本書紀』第九段第八の一書
  • ヒコホノニニギノミコト(彦火瓊瓊杵尊):『日本書紀』神武天皇即位前紀
  • アメ二ギシクニニギシアマツヒコヒコホノニニギノミコト(天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命):『古事記』
  • アマツヒコヒコホノニニギノミコト(天津日高日子番能邇邇芸能命):『古事記』
  • アマツヒコホノニニギノミコト(天津日子番能邇邇芸命):『古事記』
  • ヒコホノニニギノミコト(日子番能邇邇芸命):『古事記』

ニニギノミコトは一般的には、瓊瓊杵尊や邇邇藝命と書かれます。

日本書紀の第九段第八の一書に書いてあるような、天饒石国饒石天津彦火瓊瓊杵尊(アメ二ギシクニギシアマツヒコホノニニギノミコト)の名には以下の意味があります。

  • 天饒石国饒石(天にぎし国にぎし)=「天にも地にも親和的である」の意味
  • 天津彦(天津日高)=高天原と関わる神。日神であるアマテラスオオミカミ(天照大御神)の嫡流(ちゃくりゅう)の男子の意味
  • 火瓊瓊杵(ほのににぎ)=稲穂がにぎにぎしく成熟することの意味。「ににぎ」は「にぎにぎしい」という意味で「にぎやか」と同語源

このように、ニニギノミコトは「稲穂の神」や「農業神」としての神格を持っています。

ニニギノミコトを祭る神社などでは、五穀豊穣(ごごくほうじょう)や商売繁盛(しょうばいはんじょう)の他、国家安寧(こっかあんねい)、殖産振興(しょくさんこうぎょう)などの「ご利益」があると言われています。

【ニニギノミコト 本名】ニニギノミコトの概要。何をした人か?

ニニギノミコトは、最高神であるアマテラスオオミカミ(天照大御神)の孫にあたる神です。

ニニギノミコトはアマテラスオオミカミの命を受け、地上世界を統治するために高天原(たかまがはら)より高千穂峰(たかちほのみね)に降りてきました。

それが、天孫降臨(てんそんこうりん)と呼ばれています。

高天原(たかまがはら)とは何か?

高天原(たかまがはら)は古事記において、神々が生まれる場所として、その名が登場します。

イザナギ(伊邪那岐)とイザナミ(伊邪那美)の二人の神が、空から鋒(ほこ)を降ろして、かき混ぜて日本列島を作ることから、海の上の雲の中に存在していたと言われています。

高天原には多くの神が住み「天之安河(あめのやすかわ)、天岩戸(あまのいわと)、水田、機織の場(きしょくのば)」などがあり、人間の世界と非常に近いです。

ちなみに古事記と並ぶ日本最古の史書である「日本書紀」には、高天原の名は、ほとんどみられません。

アマテラスオオミカミ(天照大御神)とは、どんな神様か?

アマテラスオオミカミは日本神話において、太陽の神であり最高神とされます。

過去に男性神として語られていたこともありますが、女性神であり慈悲深い心を持っています。

アマテラスオオミカミにはスサノオノミコト(須佐之男命)という弟がいますが、このスサノオノミコトが乱暴な性格なため、アマテラスオオミカミの領域を何度も荒らして激怒させました。

その結果、アマテラスオオミカミが天岩戸に引きこもり、彼女が太陽神であるために「世界は暗闇に包まれた」なんてエピソードもあります。

高千穂峰(たかしほのみね)とは、どんな場所か?

高千穂峰(たかちほのみね)は、宮崎県と鹿児島県の県境に位置する火山です。標高は1,574mで、日本二百名山の一つに数えられます。

高千穂峰の山頂部には、天逆鉾(あまのさかほこ)があります。

神話において日本列島はイザナミとイザナギが、天から鉾で大地をかき混ぜて作り上げました。

その鉾こそが天逆鉾であり、この鉾はニニギノミコトが天孫降臨にて地上に降り立つ時に、大国主神(オオクニヌシ)より譲り受けたものでした。

天逆鉾は「国家の安定を願い二度と鉾が振られないように、高千穂峰に突き刺した」という伝承があります。

天逆鉾は710年代の奈良時代には、既に存在していました。

幕末の志士・坂本龍馬とその妻、お龍が「天逆鉾を引き抜いてみた」なんてエピソードもあります。

しかし、いま刺さっている天逆鉾は、レプリカです。なぜなら火山の噴火により折れてしまったからです。

天逆鉾の折れた刃の部分は、回収され島津家に献上され、近くの荒武神社(都城市吉之元町)に奉納されましたが、その後も様々な人手を転々とし、天逆鉾の刃は現在、行方不明となっています。

ニニギノミコトが地上に降りて最初にやったことは、美女との結婚

地上に降りたニニギノミコトですが、彼は国の統治の前に美しい美女と出会い結婚をしました。

その美女とは山の神・オオヤマツミ(大山祇命)の娘であるコノハナノサクヤビメ(木花咲耶姫)です。

コノハナノサクヤビメは、その名の通り「桜のように美しく儚い美女」であり、桜の木の化身です。

コノハナノサクヤビメに一目惚れをしたニニギノミコトは、猛烈アタックをして求婚を申し込みます。

結ばれた二人、しかし永遠の命を失う

ニニギノミコトに求婚されたと聞いた、コノハナノサクヤビメの父であるオオヤマツミは大変喜びました。

しかし、オオヤマツミはコノハナノサクヤビメの姉にあたるイワナガヒメ(磐長姫)も一緒に嫁がせようとしたのです。

なぜなら「イワナガヒメも妻にすれば命は岩のように永遠に続き、コノハナノサクヤビメと合わせて、花のように繁栄をもたらすだろう」との想いがオオヤマツミにはあったからです。

しかし、ニニギノミコトはこのオオヤマツミの申し出を断り、コノハナノサクヤビメだけを妻へと迎えます。

イワナガヒメが岩のように醜い容姿をしていたためです。

この出来事から、ニニギノミコトと、その子孫である天皇家の人々は花のように栄える一方で、限りある命に縛られた儚い存在となったのです。

オオヤマツミ(大山祇命)とは何者か?

オオヤマツミはイザナミとイザナギの子であり、コノハナノサクヤビメとイワナガヒメの父にあたります。

山と海、両方を司る神です。

コノハナノサクヤビメに子供が生まれた時、天甜酒(あまのたむさけ)を作り神々に振る舞ったことから、造酒の神さまである酒解神(さけとけのかみ)として、酒造りに携わる人々から信奉されています。

ちなみにスサノオノミコトの妻であるクシナダヒメ(櫛名田比売)の父母、足名椎(アシナヅチ)・手名椎(テナヅチ)はオオヤマツミの子であると名乗っています。 

炎の中の出産劇

ニニギノミコトとコノハナノサクヤビメは結ばれ妊娠をしました。

ところがニニギノミコトは「それは私の子供ではない!」と言い出したのです。

なぜなら、コノハナノサクヤビメは、一夜を過ごした後にスグに妊娠の報告をしてきたからです。

ニニギノミコトは「天神でも一夜で孕ませることはできない」と言い、コノハナノサクヤビメを疑ったわけです。

ニニギノミコトが疑ったのは、妊娠のタイミングだけではなく政治的な理由もあります。

ニニギノミコトは天津神(あまつかみ)という天上世界の神であり、コノハナノサクヤビメは国津神(くにつかみ)という地上世界の神だからです。

ニニギノミコトは地上世界を統治するために天上界から来ていますから、国津神を中心とする他の神の動きを、いろいろと警戒をしていたわけです。

このようにニニギノミコトから「それは私の子供ではない!」と言われたコノハナノサクヤビメは激怒して過激な行動に出ます。

なんと、コノハナノサクヤビメは「私の子が天の神の孫である、あなたの子であるのなら、傷つくことは無いでしょう!そうでなければ焼け死ぬ!!」と言い、出口のない小屋に籠って火をつけさせたのです。

とんでもない炎の中の出産劇だったわけですが、結果として3人の子供は無事生まれ、ニニギノミコトの子供であることが証明されました。

神から、そして人へ

ニニギノミコトとコノハナノサクヤビメの3人の子供は以下の通りです。

  • 第一子:ホデリノミコト(火照命)
  • 第二子:ホスセリノミコト(火須勢理命)
  • 第三子:ホオリノミコト(火遠理命)

この中でもホオリノミコトは、初代天皇である神武天皇の祖父です。

ニニギノミコトがコノハナサクヤビメに求婚をした時、ニニギノミコトはイワナガヒメを拒絶し、コノハナサクヤビメだけを妻へと迎え入れました。

そのためニニギノミコトもその子孫にあたる天皇家の人々でさえも、神としての永遠の命を失い人間として生きていくことになるのです。

【ニニギノミコト 本名】ニニギノミコトとイワナガヒメのエピソードは、バナナ型神話

ニニギノミコトとイワナガヒメのエピソードは、バナナ型神話に分類されます。

スポンサーリンク

バナナ型神話とは、東南アジアやニューギニアを中心に各地に見られる、死や短命にまつわる起源神話です。

神が人間に対して石とバナナを示し、どちらか一つを選ぶように命じます。人間は当然のことながら、食べられない石よりも食べることのできるバナナを選びます。

しかし、硬く変質しない石は不老不死の象徴です。

ここで石を選んでいれば人間は不死(または長命)になることができますがバナナを選んでしまったために、バナナに子ができると親が枯れてしまうように、人間は短命になってしまうのです。

日本神話では、高天原より地上に降りたニニギノミコトに、オオヤマツミがコノハナサクヤビメとイワナガヒメを嫁がせようとしますが、ニニギノミコトは美女であるコノハナノサクヤビメだけを選び、ニニギノミコトをはじめ、その子孫である天皇家の人々も寿命という制約を受けることになりました。

これはバナナ型神話の変形と言えます。

この日本神話のような変形は、旧約聖書の創世記29章におけるヤコブの妻である、レアとラケルの姉妹の説話とも類似しています。 

【ニニギノミコト 本名】ニニギノミコトの家系

  • ニニギノミコトの曾祖父=イザナギ(伊邪那岐)
  • ニニギノミコトの曾祖母=イザナミ(伊邪那美)
  • ニニギノミコトの祖父・祖母=アマテラスオオミカミ(天照大御神)※アマテラスオオミカミは1人で子を宿したので「未婚の母」と言えます
  • ニニギノミコトの父=アメノオシオミミ(天之忍穂耳)
  • ニニギノミコトの母=タクハタチヂヒメ(栲幡千千姫命)
  • ニニギノミコトの妻=コノハナノサクヤビメ(木花咲耶姫)
  • ニニギノミコトの第一子=ホデリノミコト(火照命)
  • ニニギノミコトの第二子=第二子:ホスセリノミコト(火須勢理命)
  • ニニギノミコトの第三子=第三子:ホオリノミコト(火遠理命)

【ニニギノミコト 本名】ニニギノミコトをお祀りする神社

主祭神はサルタヒコオオカミ(猿田彦大神)ですが、三重県・椿大神社(つばきおおかみやしろ)には「ニニギノミコトが天孫降臨の際に使用した御船が降り立った」という伝承が存在します。

【ニニギノミコト 本名】:まとめ

以上、ニニギノミコトの本名と彼の歴史について、深掘りしてみました。

このニニギノミコトの天孫降臨については日本だけではなく、世界的にも注目されていて古代メソポタミア、現代で言うところのイラクのあたりに栄えた「シュメール文明」との類似点も指摘されています。

ぜひ、ニニギノミコトと関係する場所へ行ってみてください。もしかしたら、あなたが「歴史の謎を紐解く第一人者」になれるかもしれません。