「古事記」や「日本書紀」に代表される日本神話。

八百万(やおよろず)といわれる数多くの神様が登場しますが、その中でも最も有名な神様の一人がスサノオノミコトです。

 

漢字では、

 

  • 須佐之男命
  • 素戔男尊
  • 素戔嗚尊

 

などいくつかの表記がありますが、今回は分かりやすくカタカナでスサノオと記載します。

 

それでは、そのスサノオノミコトとは、いったいどのような神様なのでしょうか?

今回はスサノオノミコトの逸話や功績を紹介します。

 

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スサノオノミコトの出生の秘密

スサノオは父親にあたるイザナギ(伊弉諾)の禊(みそぎ)から生まれたと「古事記」に記されています。

イザナギは天地が生まれたころに出現した神様で、イザナミ(伊邪那美)と力を合わせて今の日本の大地や数多くの神様を生み出しました。

 

そのイザナミはある神様を生んだ際に死んでしまい、悲しみにくれたイザナギは黄泉の国まで会いに行くのですが、その時の穢(けが)れを洗い落とした時に生まれたのがスサノオノミコトです。

 

この時、多くの神様が同時に生まれましたが、アマテラス(天照)、ツキヨミ(月読)とスサノオの3柱の神様は特に貴い神様として「三貴子」と呼ばれています。

そして、アマテラスは天(高天原)を、ツキヨミは夜を、スサノオは海原を治めるようイザナギから命じられました。

 

天照(アマテラス)を困らせる乱暴者

アマテラスとツキヨミは、イザナギに命じられたとおりそれぞれの世界をしっかりと治めます。

しかし、スサノオだけは言うことを聞かず、日々、死んでしまった母親のイザナミに会いたいと泣き明かして暮らします。

 

その影響で海原は嵐のように荒れ放題となってしまい、ついにイザナギはスサノオを追放処分にしてしまいます。

 

父親のもとを追放となったスサノオは、姉のアマテラスに会いに高天原に向かうのですが、アマテラスは警戒してスサノオを快く受け入れません。

スサノオが高天原を占領しに来たと考えたアマテラスは戦闘態勢を整えて迎え撃ちます。

 

誤解を解こうとしたスサノオは誓約(うけい)を申し出ます。

 

誓約とは吉凶を占うもの。

スサノオとアマテラスはお互いの持ち物で神様を生み出すことで占うと、スサノオの持ち物から三女神が生み出されます。

 

すると、「清い心を持っているから女神が生まれた。」とスサノオは一方的に誓約の勝利宣言をしてしまいます。

そして、疑いが晴れた思ったスサノオは、調子に乗って高天原で乱暴、狼藉を働きます。

 

アマテラスの田んぼを壊したり、御殿の中に脱糞をしたり、ついには機織りしている小屋に殺して皮をはいだ馬を投げ込んで女性を殺してしまいます。

 

この乱暴におびえたアマテラスは、天の岩戸という洞窟に隠れて、大きな岩で入り口をふさいでしまいました。

アマテラスの隠れた世の中は光を失い、闇夜の世界となってしまいます。

 

高天原の神々は、なんとかアマテラスを天の岩戸から出てきていただいて、明るい世界に戻そうと相談を始めました。

 

知恵の神様オモイカネは、作戦をたてます。

 

「まず、アマテラス様に朝が来たと勘違いさせるように鶏をなかせましょう。それから、岩戸の前で歌って踊って、宴を開きましょう。 神々はいかにも楽しげにはやしたてるのです。

不思議に思ったアマテラス様が岩戸を少しでも開けたときに、力持ちのタヂカラオが外に引っ張り出してふさいでいた大きな岩を遠くに投げ捨ててしまうのです。」

 

オモイカネの作戦は大成功です。

 

歌って踊ったアメノウズメは芸能の神様としてあがめられ、遠くに投げ捨てた大きな岩は長野県の戸隠山になったといわれています。

 

岩戸から出てきたアマテラスと神々は、あまりにも乱暴なスサノオを高天原から追放してしまいます。

 

この時のスサノオは、なんとも乱暴で荒ぶる嫌われもの神様でした。

母親を慕い、母親のいない寂しさや姉に理解されない苦しさから、乱暴を働いてしまいました。

 

反抗期の若者がグレてつっぱてしまう。

今で言うとそんな感じなのかもしれません。

 

 

ヤマタノオロチを退治して天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)をGET

高天原を追放されたスサノオは出雲の国、今の島根県のあたりに降り立ち、そこで、一組の泣いている老夫婦に出会います。

老夫婦には8人の娘がいたのですが、ヤマタノオロチ(八岐大蛇)という怪物がやってきて一年に一人ずつ娘を食べてしまうというのです。

 

今年ももうすぐヤマタノオロチがやってきて、最後の娘であるクシナダヒメ(奇稲田姫)が食べられてしまうといいます。

ヤマタノオロチとは八個の頭と八本の尾を持ち、八つの丘と谷にまたがるほどの恐ろしい大蛇です。

 

 

あわれに思ったスサノオは、ヤマタノオロチの退治を申し出ます。

老夫婦に命じて、大きな八つの甕にお酒を用意してヤマタノオロチを待ち構え、現れたヤマタノオロチが酒に酔ったところで一気に八つの頭を切り落としてしまいました。

 

この時に八岐大蛇のしっぽから出てきたのが天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)。

後にヤマトタケルノミコトが草を薙ぎ払ったことから「草薙の剣」と呼ばれる剣が誕生します。

 

※草薙の剣は熱田神宮の御神体となっています。

 

見事に怪物を退治したスサノオはクシナダヒメと夫婦となり、この地で幸せな家庭を作り、この国を豊かで幸せに統治します。

 

そして、スサノオノミコトが住んだとされる「須佐」という地域には、現在スサノオノミコトを祀る須佐神社が建てられていて、日本屈指のパワースポットとして有名になっています。

 

高天原を追われたスサノオは老夫婦と娘に出会い、悪事を退治した上で家族の幸せや平和の尊さを知りました。

若いころ不良だった男が、彼女ができて優しく生まれ変わってゆく。

 

スサノオはなんとも人間くさい神様ですね。

 

 

その後のスサノオ

須賀の地で幸せに暮らしていたスサノオは、妻のクシナダヒメに先立たれ、悲嘆にくれて娘のスセリヒメ(須勢理毘売命)と、根の堅洲国と呼ばれる地下の死者の国の王となってしまいます。

 

その後、娘のスセリヒメは根の堅洲国に現れた男性と父親スサノオの反対を押し切って結婚し、地上に戻ります。

そのときの結婚相手がオオナムチ(大穴牟遅)といい、後に大国主命(オオクニヌシノミコト)と名のり、葦原の中つ国、現在の日本という国の原型を作り出した神様です。

 

じつは、この大国主命もスサノオの六代後の子孫ということになるのですが、このあたりは神話の世界の出来事。

時間と空間の関わりも今の世の中とは違っていたのかも知れません。

 

人間らしさを持った神様スサノオ

スサノオという神様は、若いころは乱暴もので手がつけられなくて、ある時、愛に目覚めて悪者を退治して幸せな家庭をもち、娘や子孫に繁栄の礎を築きました。

世界中に様々な神様がいますが、これほどまでに人間くさい、感情をあらわにした神様は他にはいるでしょうか?

 

 

正しいだけではなく、悪いだけではない。

色々な悩みや葛藤を乗り越えて生きてきた神様。

 

まさに、日本人の心に響く、日本らしい神様だと思います。

 

天地を作ったイザナギ、イザナミから受け継ぎ、出雲の地で国を作り子孫の大国主命がアマテラスのいる天上界の神様に豊かになった国を譲り、現代の日本につながっています。

 

スサノオは、まさに日本の神様、日本のヒーローと言えるのではないでしょうか?

 



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